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あの日の夜空に浮かぶ月は、淡い色だった気がする。
僕は、少し冷たい風が色付き始めた葉を揺らす庭に君を呼び出した。
…自分でも、なぜ呼び付けたか分からないが…
「どうしました?」
…君の声で、酷く安心できた。
「ああ、少し」
無理やり笑みを浮かべる。
君の笑顔が、僕には少し眩しかったんだ。
「まぁ…座りましょうよ」
君が僕の手を握る。
その手はやけに冷たくて、思わず握り締めた。それでも君は笑ったままで…
その手を引かれ、数歩先にある縁側に導かれた。
「こたびの戦、僕は必ず勝つ」
「えぇ、貴女なら勝てますよ」
ありがとう、空に浮かぶ月を見ながら呟いた。
会話は途切れてしまった。
沈黙は冷たい風を余計に冷たく感じさせる。
ふと、君の手が僕の頭をなでた。
「…綺麗な月ですね」
ああ…いつからだろう、
君の指が髪を滑る度妙な感覚を溢れさせる。
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