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僕を気遣う声が、僕の方を見る目が、僕の肩を叩く手が…
なぜか、こんなに、苦しくて嬉しい。
「…どうしました?」
…考えこんでいた。君が何か言っているのに気がつかなかった。
少しだけすまなさそうにしながら、その旨を伝える。
あの苦しくて嬉しい感覚は内緒にした。
言ってしまったら、終わりだと思ったから。
君はそんな僕を「しかたがないですね」とだけ言って頬をなでる。
仄青い指が、なぜかこんなに美味しそうに感じる。
今かみ付いたら、そんな邪な想像を噛み殺した。
「…あ、そうだ」
そんな意図も知らず、君の手は自分の懐から何かを出す。
…小さな、御守りだ。
「必勝祈願です、…私だと思ってもってってください。」
いつもの笑顔。
いつもの気遣い。
…苦しい
ああ、君の、君のそんな優しさを、いつから勘違いしてしまったんだろう?
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