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「なんの用ですか」
無愛想に答える。
昼のこともあって、顔どころか声にも嫌悪感を抱く。
早急に用を済まさせてしまえ。
『決まってんだろ、部屋にこい』
「アホですか。
ナルシストはアホだって相場が決まってるんですね。」
『来るよな?』
……言葉が通じないのだろうか。
「まったく…
なんだってそう俺に執着するんですか。
アンタに構ってやれる奴なんて、ごまんといるでしょうよ。」
『そうだな』
え、なにこいつ。
そこは言葉詰まらすとこだろ。
空気読めよ。
あ、もしかして空気が文字化けして読めないのか。
「一応否定しておくとこじゃないんでしょうか」
『俺は嘘が嫌いだ』
……そういう問題?
『事実否定したところで、自分の首絞めるだけだろ』
「……自分の首絞めるキッカケを作らなきゃ良いだけだと思うんですが」
ククッと喉で笑う音が聞こえた。
『……本当に面白いな。
お前みたいなヤツは、この学園じゃあ珍しい。
食い掛かってくるヤツはいるが、どれも後ろ盾のあるヤツばかり。
お前みたいに無鉄砲に噛みついてくるヤツは初めてだ。』
「……そりゃどうも」
何を言ってもダメらしい。
新鮮さを求めたお坊ちゃんめが。
「俺としては、先輩みたいな非現実的な人とは無縁の平凡で地道な三年間を過ごしたかったんですがね。」
『この学園に通う限り、無理な話だ』
「……ふん」
思わず納得のいかないような溜め息が洩れた。
20秒程度で話を終わらそうとしたはずが、一分はゆうに越えている気がする。
「…………わかりました、行けばいいんですね。」
『そうしときゃあいいんだよ、最初から』
玄関から先は、入らないがな。
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