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「(そん、なッ…剣は一度しか…振って…ない、筈…)」
薄れゆく意識を手放さまいと、ルナは歯を食い縛り必死に耐えていた。
「愚かな娘よ…。
貴様如きが我が剣を追えるとでも思うたか?
何度剣を振ったのかさ見えん
ようでは話にならん…。」
「…!」
そこで、ルナはようやく理解する。
自分が一体何故、地に伏<フ>しているのかを…。
「(見えな、かった…)」
認知すら出来ないほどの速度で剣を振るうジェイクに対して、ルナは最早為す術がなかった。
「少し時を使い過ぎたようだ…」
ジェイクは絶望しているルナを尻目に、木々の隙間から見える空をチラリと確認し、ぼそりと呟いた。
「どうやら…状況は、あまり
芳<カンバ>しくないようですね…。」
「あまりではなく…最悪です」
そこで、ようやく目を覚ましたのかケリンズが現在の状況を確認し溜め息混じりに声を発すると、リナスは横目で彼の言葉に訂正をいれる。
「体の方は?」
一見、目立った外傷は無いように見えるケリンズに微かな期待を込めてリナスが問うが…。
「私はあなたを庇うような形で木に激突したんですよ?
無事な筈がないじゃないですか…」
ケリンズは肩を落としながらそう呟くとリナスに目を向ける。
「激突した際に折れた肋<アバラ>が恐らく肺を圧迫し、呼吸機能の低下、また全身の至る所を骨折しているせいで身動きがとれません。」
ケリンズは自嘲するかの如く瞳を閉じて薄い笑みを作った。
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