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「(まさに…)」
『絶体絶命』
三人の脳裏に同じ言葉が浮かび冷たい汗が頬を伝う。
「クククッ…なかなかよい顔になったではないか。」
それを嘲笑うようにジェイクは口を吊り上げ笑みを作るが、それは直ぐに消え、変わりに残念そうに肩を落とした。
「だが、残念だ…。
もう、貴様らに構ってやる暇は我にはない。」
そう言うと彼はゆっくりと剣を頭上に掲げる。
「終いだ…」
そして、ピタリと頭の真上に剣を止め、身の毛が弥立つほど冷たい声で一言だけ、そう呟いた。
「(ここまで、ですか…。)」
ケリンズは瞳を閉じ、自らの最後を悟った。
それは、最早『諦め』に近い
ものだったのかも知れない。
全身は鉛のように重く、動くことすら儘ならない…いや、動く気力さえ無い。
「(やはり…あの少年の言う
通り、“私程度”では何一つ…変えることなど出来なかった。)」
ふと、シュバルツの発言が頭に過ぎったケリンズは、喉の奥でククッと自らを自嘲しながら前を見た。
己の最期を見届けるため…。
そして…
ジェイクは頭上に掲げた剣を一気に振り下ろした。
その瞬間、凄まじい衝撃波が
地盤を破壊しながら三人に向かって突き進む。
「…!」
ルナはその威力に目を見開いた。
先程まで自分が受けていたものとは次元がまるで違う。
「(ごめん…シュバルツ。
ワタシに…あなたを救うことは、
出来ない…。)」
ルナは迫り来るう衝撃を見据えながら、朧気に浮かぶ黒髪の少年に告げると、ゆっくり瞳を閉じた。
そして、次の瞬間…
凄まじい轟音と地鳴りが森全土に広がった。
「(あ、れ…?)」
だが、ルナの体に衝撃が襲うことはなく、ただ砂塵が辺りを覆い尽くすのみ。
そして、唖然としているルナの耳に何者か“達”の声が届く。
「よく耐え抜きましたね。」
「ふぅ…危なかったぜ。」
「チッ…面倒臭せぇ…」
それは…
男女を交えた三人の声だった。
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