追跡者

49/55
前へ
/247ページ
次へ
「(まさに…)」 『絶体絶命』 三人の脳裏に同じ言葉が浮かび冷たい汗が頬を伝う。 「クククッ…なかなかよい顔になったではないか。」 それを嘲笑うようにジェイクは口を吊り上げ笑みを作るが、それは直ぐに消え、変わりに残念そうに肩を落とした。 「だが、残念だ…。 もう、貴様らに構ってやる暇は我にはない。」 そう言うと彼はゆっくりと剣を頭上に掲げる。 「終いだ…」 そして、ピタリと頭の真上に剣を止め、身の毛が弥立つほど冷たい声で一言だけ、そう呟いた。 「(ここまで、ですか…。)」 ケリンズは瞳を閉じ、自らの最後を悟った。 それは、最早『諦め』に近い ものだったのかも知れない。 全身は鉛のように重く、動くことすら儘ならない…いや、動く気力さえ無い。 「(やはり…あの少年の言う 通り、“私程度”では何一つ…変えることなど出来なかった。)」 ふと、シュバルツの発言が頭に過ぎったケリンズは、喉の奥でククッと自らを自嘲しながら前を見た。 己の最期を見届けるため…。 そして… ジェイクは頭上に掲げた剣を一気に振り下ろした。 その瞬間、凄まじい衝撃波が 地盤を破壊しながら三人に向かって突き進む。 「…!」 ルナはその威力に目を見開いた。 先程まで自分が受けていたものとは次元がまるで違う。 「(ごめん…シュバルツ。 ワタシに…あなたを救うことは、 出来ない…。)」 ルナは迫り来るう衝撃を見据えながら、朧気に浮かぶ黒髪の少年に告げると、ゆっくり瞳を閉じた。 そして、次の瞬間… 凄まじい轟音と地鳴りが森全土に広がった。 「(あ、れ…?)」 だが、ルナの体に衝撃が襲うことはなく、ただ砂塵が辺りを覆い尽くすのみ。 そして、唖然としているルナの耳に何者か“達”の声が届く。 「よく耐え抜きましたね。」 「ふぅ…危なかったぜ。」 「チッ…面倒臭せぇ…」 それは… 男女を交えた三人の声だった。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10989人が本棚に入れています
本棚に追加