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「てめぇ…誰に向かって口聞いてんのか、わかってんのか?」
ギメルは眉をピクリと動かすと、ティアリスを怒気の籠もった瞳で睨み付ける。
「無論あなたです。
拒否すれば然<シカ>るべき対処を取らせてもらいます。」
然るべき対処…この場合力ずくで、と解釈した方が適切だろう。
そして、それに気付かぬギメル
ではない。
「上等じゃねぇか…。
レテインだかなんだか知らねぇが、やれるもんならやってみろよ
この糞尼<クソマア>がッ!」
その言葉に逆上したギメルは声を荒げると、腰に差してある二本の剣の内、紅い装飾が鞘に施された剣に手を掛けた。
「オイ!…落ち着けッ!
ここで“そんなもん”振り回してみろ!
お前の部下も居んだろうがッ!」
クロメルは、ギメルが剣に手を掛けた瞬間、その手を掴み、制すると彼を怒鳴り付けた。
「チッ…」
ギメルは、ばつが悪そうに舌打ちをするとクロメルの手を振り払い、外方を向いた。
「今は無駄な争いをしてる場合じゃねぇだろ。
一刻も早く負傷者を安全な場所に移動させるのが先決だ。」
クロメルは真剣な顔付きで両者の間に立ち、仲立ちをする。
「…………………」
「仰<オッシャ>る通りです…」
ギメルは相変わらず外方を向いているが、クロメルの意見には異論はないようで、一方のティアリスは反省した様子で肩を落とした。
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