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「話は付いたか?」
ジェイクは冷たく光る剣光をクロメル達に見せ付けるように剣を傾ける。
「あぁ、待たしてすまねぇな。」
クロメルはそれに動じることなく
口元を微かに緩めながら彼を睨み付ける。
「ギメル…あまり勝手に動くなよ相手はなかなかの手足れ…。
一筋縄じゃいかねぇ筈だ。」
そして、彼はジェイクから目を
放さず隣に居る紅髪の男に静かに口を開いた。
横にいるギメルは既<スデ>に剣を構えており、今にも斬り掛かりそうに勢い付いている。
しかし、その手に持つ剣は先程ギメルが抜剣しようとした物ではなく、その隣に差してあった剣のようだ。
「俺に指図すんじゃねぇ…」
そんなクロメルの忠告を余所に、ギメルは構えを崩すことなく、殺気立った瞳を彼に向けると凄みの利いた声で短く告げた。
「はぁ…だったら、俺も好きにやらしてもらうぜ。」
ギメルの発言に小さく溜め息を
つき、クロメルは不敵な笑みをジェイクに向ける。
「俺の仲間に手ぇ出したこと…後悔させてやるぜ。」
そして、全身に重々しい覇気を纏ながらクロメルは体勢を低め…。
「いくぜ!」
闘志に満ちたクロメルの掛け声と共に激闘の火蓋が切って落とされた。
その時だった…
彼等の横手から突如、爆音にも似た凄まじい轟音が響き渡った。
驚きの眼で轟音がした方を見る彼等だが、周辺には砂塵が立ち込めていた為、現状を把握出来ない。
しかし、その数秒後、砂塵は
異様なまでの早さで視界を彼等に明け渡たした。
風など吹いていない。
たが、砂塵は何かに吹き飛ばされたかのように消え去った。
そして、その中心には…黒髪の少年が静かに立っていた。
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