始動

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「やべぇ! 一旦、ここから離れるぞッ!」 現状を逸<イチ>早く理解したクロメルはルナを抱えて、戦闘を開始した二人から距離を取った。 残りの二人も、それぞれの部下を庇いながらクロメルの指示に従い、戦線を離脱した。 「(彼等は一体? それに、あの少年…まさか…)」 そんな中、ティアリスは突然現れた黒髪の少年のことを考えていた。 あの少年を目にした瞬間、ティアリスの脳裏を過ぎったのは、例の事件のこと。 何故か、と聞かれれば応答に詰まるのだが、ティアリスには不思議と妙な確信のようなものがあった。 「(あの速さ…目で追うのが、やっとだった…。)」 その同時期、クロメルは前<サキ>のシュバルツの動きを思い出していた。 辛<カロ>うじで追うことしか出来なかった少年の動き、そして次の強烈な斬撃…。 あの少年が敵にせよ、そうではないにせよ、子供が刃は振るうことはあまり気持ちの良いものではない。 「(どうする…参戦するか? いや、参戦したところで渡り合えるのか、“今の俺”に…)」 頭ではどう思おうとクロメルの体はジリジリと前へ進む。 だが… 「やめとけ。」 そのクロメルを止めたのは意外にもギメルだった。 「ギメル…」 「昔のお前ならともかく…今のお前が行っても死ぬだけだ。」 「…!」 自分が思っていたことをギメルに言われ、クロメルは驚いた表情を彼に向ける。 「てめぇの腑抜けた面見りゃ…嫌でもわかるぜ。」 『平和ボケ』…そんな言葉が脳裏に浮かんだが、ギメルは口には出さなかった。 「…………………」 それでもクロメルには効いたのか、顔を顰める、もう体は前には進まなかった。 「…………………」 それを横目で確信したギメルは、戦闘中の二人に目を向けた。 確かに二人を見ているのだが、その瞳や表情からは何を考えているのか伺い知れなかった。
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