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「…………………」
天から降下してきたシュバルツは何事もなかったように着地し、木に突き刺さる刀を抜き取ると、何かを探るように辺りを窺<ウカガ>う。
「(やべぇな…)」
目の前で繰り広げられていた戦闘は今の一撃で恐らく決着はついただろう…。
だが、勝者であるシュバルツは戦果に満足した様子もなく、それどころか、なにか別の獲物を探しているかのように見える…クロメルは漠然とそう感じていた。
「(なら、次に奴が狙うのは…)」
大方、自分達だろう。
そう思うと、クロメルは背筋が冷たくなるのをはっきりと感じた。
「(チッ…いくら俺でも『荷物』抱えながらは分が悪りぃ…。)」
一方のギメルも、どうやらクロメルと同様のことを想定しているのか、今の現状に悪態をつく。
「…うっ」
そんな緊迫した空気の中、一人の少女が目を覚ました。
「…!…ルナ、目が覚めたか?」
「クロ…メル…」
ルナは、まだ覚醒仕切っていない頭で今に至るまでの過程を整理していた。
「…!…そうだ、私ッ…いっ!」
ルナが勢い良く起き上がろうとした瞬間、体に激痛が走り、彼女は顔を顰める。
「おい、あまり無理すんな。
大丈夫だ。お前をやった相手は黒髪の奴が倒した。」
まだ、動くほどには回復していないルナを気遣い気味に、クロメルは声を掛けた。
「(黒髪…まさかッ)シュバルツ!?」
黒髪という単語で瞬時にある人物を連想させたルナは反射的に彼の名を口にした。
「あいつを知ってんのか?」
ルナの言葉に驚いた表情で問い掛けたクロメルは、ほぼ無意識に自分の前方に居る少年に視線を向けた。
すると、ルナは安堵した様子でクロメルと同じ方向に目を向け、自分が思い描く人物の無事を確認する…
だが、少年を目にしたルナの口からは思いも寄らぬ言葉が零れた。
「…だ…れ?」
微かに震えるその声は、確かに目の前の少年に向けられたものだった。
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