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「(違う…シュバルツじゃない。
あれは…)」
ルナの脳裏に中央街で変異したシュバルツの姿が過ぎった。
「(なんで、また…)」
前の変異では怒気を爆発させ、目に映る全ての物を破壊するかのような危うさを漂わせていた。
しかし、今回はどうだろうか…彼の顔からは何の感情も感じられず、最早、本当に生きているのかさえ疑ってしまう…まるで人形のようだ。
実験生物
ふと、そう言ったジェイクの声がまるで耳元で囁くように脳裏に木霊する。
「止めないと…」
気が付けば知らず知らずうちにそう呟いていた。
だが、いくら立ち上がろうとしても足は思い通りに動かず、更に激しい痛みが邪魔をする。
「ルナ、止せッ…どうした?」
無理矢理でも立とうとするルナをクロメルは慌てて制する。
「お願い…シュバルツを止めて…」
自分を制するその腕を掴みながら、ルナは縋<スガル>るような声色でクロメルに訴えた。
「シュバルツ…あの黒髪のことか?」
「…………………」
ルナは小さく一回頷くと俯いた。
「止めるって言ってもよ…何をどうすりゃいいんだ?」
「それはッ…」
その問いにルナは言葉を詰まらせた。
止める…自分で言ったその言葉を至極、漠然と感じた。
無論、殺すという意味ではない
しかし、ただ戦闘不能にしただけで今の状況を打破出来るのかルナには確証がなかった。
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