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「知らぬとでも思うたか?
あの施設での実験結果及び段階報告書を始めとする記載資料は全て我等が押収した。
その中には無論、被験者の情報も…その者達の死亡記録も存在する。」
ジェイクは然も当然だとでも言うような口調で、硬直しているシュバルツに続ける。
「その数え切れぬ死亡報告書の中に、一際は目立つ人間が居た…“黒髪”の少女がな。」
「…ッ」
最後の言葉を耳にした瞬間、シュバルツの肩が小さく跳ね、表情が強張るのをジェイクは見逃さなかった。
「施設唯一の付随実験の成功例シュバルツ=デルハーツの血縁関係にあたる…その者の名は――」
そんな彼の様子を横目にジェイクは更に話を進め、その話が終盤に差し掛かったところだった。
「黙れ…」
突如、発せられた怒声によってジェイクの話は遮られた。
「貴様のような奴が気安く…その名を口にしようとするなッ!」
そう声を激しく荒げたシュバルツの表情からは、消え欠けていた闘争の意志が現れ、瞳には凄まじい怒気が宿る。
「なんと虚しきことよ…」
だが、ジェイクは変貌したシュバルツに対し驚く訳でもなく、それどころか冷笑を交え、彼を蔑むように見据える。
「時が過ぎて尚、亡き者の背を追い続けた挙げ句…他人にその影を重ねたか?」
「…っ!?」
その言葉の意味を即座に理解したシュバルツは大きく目を見開いた。
「確かに、似ているな…。」
そんなシュバルツを尻目にジェイクはある一人の“少女”へと視線を向けた。
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