平行線の向こう側

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人は皆、それぞれ異なる色を持っている。 赤、青、黄色、緑、茶色。他にも様々。 何十種類もの価値観も持つ人間。 生まれた時から、僕達の色は既に決まっていた。 しかし、人生という舞台の上で人は日々……少しずつ色を変えていく。 赤と青が加われば、紫。 赤と黄ではオレンジ。 青と黄色は緑。 家族や親友。愛する人によって。 けれど、世の中には二つだけ、変わらない色と全て変わってしまう色がある。 それは黒と白。 黒はけして他の色に染まることはない。 自分の価値観を強く持ち、それが時として、人に理解を苦しまれる存在。人との馴れ合いをあまり好まず、長い時間で芽生えた信頼だけを受け入れるため、簡単に心開くことはない。 自分は自分でありたいと強く願う頑固さがいつも邪魔するため、孤独心は表面上には表さないものの、いつもどの色より寂しさを胸にかかえて生きていかなければならない……不器用な一匹狼タイプ。 一方、白はその正反対。何色にも染まることのできる色。 どんな価値観も理解しようとする優しさを持ち、愛されたいという願望が誰よりも強い。時として、その優しさが弱さを生み、全て相手色に染まってしまうので、それが結果的にプラスになったり、マイナスになったりしてしまう。 自分の価値観を保ち続ける強さがなく、人の価値観で簡単に色を変えてしまう、良くいえば、素直で人から愛される。悪く言えば、自己を突き通す意思が弱い。黒と同じように寂しがり屋だが、白は人に尽くしすぎるため、黒のように孤独心に悩む心配はないが、パートナーの相手次第で人生が決まってしまうくらい……愛情的な情熱家タイプ。 今、こんな説明をわざわざしたのも理由がある。 それは、僕が黒で沙夜が白だったからだ。
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