平行線の向こう側

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「彰ってまさか……また、別れたのか?」 「また、とはなによ! 今回は二ヶ月持ったわよ」 「二ヶ月で威張るなよ、バカ」 「ひ、ひどい……。違うもん。今回は相手が悪かったの。でも、悔しいよ。あいつ、あんなに私に『愛してる』って言ったくせに……セックスしたらもう、愛想尽きたみたいに冷たくなりやがって」 「簡単に心許すから、痛い目にあうんだよ」 「まだ、心は許してなかったもん!」 「へぇ。じゃあ、お前さんは心許してない相手に体は許すんだ」 「うっ。そ、それは……」 僕が皮肉を投げ付けると、返す言葉もないのか、沙夜は俯いたまま、なにも言い返してこない。 こういうことは珍しいことじゃないが、僕も毎回のことながらなんて励ましていいか迷ってしまう。 沙夜との友達関係はもう中学時代からの付き合いなので、はや5年以上経つ。 でも、心配は無用だった。 沙夜はいくら人に傷付けられても、またすぐに新しい恋を見つけていく子だった。 絶対、人間不信になることなんてなく、たくさんの過ちを繰り返しながらも、人と正面から向き合い続け、沙夜は僕の知らないところで、少しずつ強くなっていった。
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