平行線の向こう側

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僕は沙夜との関係が『平行線』に似ていると思っていた。 平行線は交わりこそしないがいつもすぐ隣にある。しかし、平行線同士が交わることはけしてない。 僕達はずっと平行線のままだった。 言葉の通り、僕はいつも沙夜の傍にいた。 誰よりも沙夜のことを知っている自信もあった。沙夜の性格や趣味、特技や口癖だって知っている。しかし、相手のことをいくら知り尽くしたとはいえ、沙夜が僕を好きになってくれるという条件には至らないんだな………と、嫌なほど思い知らされた。 それは、長い付き合いをしていても、沙夜が幾度となく、恋に落ちる相手はけして僕じゃなかったからだ。僕の色ではなく、違う人の色を好み、そのたびに沙夜はいろんな色に染まり続けていく。 そんな沙夜に対して僕は羨ましいという妬みと、必死に隠し続ける嫉妬心で胸が張り裂けそうになっていた。 お互いに同じ世界にいて、同じ時間を過ごしているのに、人の温もりを知り尽くした沙夜とは違って、僕はだけは何色にも染まれず、いつも一人ぼっちで、辛い時も、『大丈夫、大丈夫』と自分に強く言い聞かせ、知らず知らずの内、僕は何年という長い年月をかけて、人に頼らず、甘えることなく、一人で立ち直る術を覚えてしまったのだから。
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