平行線の向こう側

8/10
前へ
/10ページ
次へ
その日の夜。 僕は中学校の頃からずっとしまい込んでいた絵具一式を取り出し、親友の言った答えを探すため、さっそく貰った黒と白のチューブを使うことにした。 なにを描くのかも思い浮かばず、画用紙には無意識にも、黒と白の線を描いていた。 そう、僕と沙夜のような平行線を現実と同様、こんな絵の世界ですら、僕はその線をけして交じり合わせることはさせなかった。 しかし、わからないな。一体、僕の色ってなんだろう? 僕は首を傾げながら、無意識に筆を白へ移す。 「あれ?」 そんな時だ。黒を使っていた筆に、白をくわえた時、色が変わっていくことに気付いた。 当たり前のことだけど、僕は今の今まで全く気付かなかった。 黒は色を変えることができるのだ。 赤や青、黄色や緑、他のたくさんの色をくわえても色を全く変えない黒が、一つだけみるみると色を変えてしまう色を。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加