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本来なら、ハウンドドッグからそう簡単に逃げおおせる事などはないのだが、如何せん魁堵はその事を知らない。
(しかし……更に迷っちまったなぁ……どうしよう。)
そしてうんうん唸って思案している魁堵の頭上から忍び寄る影が一つ――。
「む、マズい!」
それは1メートルはありそうな体を細い糸で器用に支えながら、スルスルと魁堵の頭上から首筋に向かって少しずつ降りてくる――
「気付いてないようですな。」
「ああ、厄介な……ハウンドドッグの次はスレイヤーか……あいつはどれだけ魔物に好かれてるんだまったく。」
そう言いつつ、女性は弓を構え矢を番える。
「おい! そこのお前! 今すぐそこから離れないと命の保障はないぞ!」
「え!?」
驚き、声のした方を振り返った魁堵の目の前には鋭い牙の生えたけむくじゃらの、普通に生きている内では絶対に見る事のないだろう蜘蛛の口の中――。
そこから滴り落ちた液体が地面に落ちてジュッと溶かした様な音が聞こえた瞬間、やっと魁堵の頭は全てを理解した。
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