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『魁堵……俺の話を聞いてくれよ……』
それは遠い日の記憶――
『うるさい! お前の話なんか誰が聞くか!』
幼い頃から出来る兄と比べられていた俺は、とにかく兄が嫌いだった――
『魁堵……』
『なんだよ! そんなに優越感に浸りたいのかよ!』
事あるごとに兄に衝突し、憂さ晴らしとばかりに何も言わない兄貴に俺が悪態を吐くのが常だった――。
『魁堵……お前ももう15歳だな……』
『……だから何? そんな事兄貴に関係ないじゃん。』
しかし、俺の15歳の誕生日の日。その日はいつもと違った――
『……お前には随分と迷惑かけたなぁ……俺は兄貴失格だな。 まあお前は俺の事を兄貴なんて思いたくもないだろうけど……。』
『……分かってんならいちいち言わないでくれない?』
そうは言いながら、俺は少々違和感を感じていた。
いつもなら俺にあしらわれてすぐ申し訳なさそうな顔をしてどこかに行く兄貴が、その日ばかりは……ずっと真面目な表情で立っていた。
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