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『ふふっ……まあ今日はそんな話をしに来たんじゃないんだ。』
後ろから聞こえてくる兄貴の声は、どこか寂しげで――
『今日からお前は自由だ。 俺という重圧に今までよく耐えてくれたな……今まですまなかった。』
俺は兄貴の言っている事の意味が分からなくて――
『ただ、一つだけ……一つだけ最後にお前に教えておきたい事がある……』
『最後』という言葉にいまいち反応できず――
『人を信じろ。 俺の事はいいが、お前が好きな人、お前を好きでいてくれる人は何があっても絶対に信じろ。 いつか必ず……必ずお前は信じる事の大切さが分かると俺は思っている。』
やっと振り向いた時にはあのいつも困ったような顔をしている兄貴の顔は、そこにはなくて――
『言うだけ言って逃げるなよ、クソ兄貴……』
その日、兄貴は突然消えた。
姿も、存在していた痕跡も全て――
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