第一章 勇者の目覚め

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家の中を一通り見て回っても母さんの姿はない。 (まあ母さんならこんな時もあるだろ。 晩飯用意するか。) わざわざ電話して確認するのも鬱陶しいだろうと思い、俺は台所に向かった。 (ルーの作り置きは……っと、あったあった。) そう、昔兄貴がいた時はこんなに母親を心配する事なんてなかった。 それはというものの、この世から兄貴の痕跡がなくなった時、俺の両親もまるで記憶喪失かのように兄貴の事を忘れていた。 いや、最初からいなかった事になっていた。 兄貴の事を覚えているのは俺一人で、警察に連絡と言っても両親に「大丈夫?」と心配される始末。 そして俺はそれから普通に両親から一人息子として接されてきた訳だ。 今では慣れたものの、兄貴がいなかった理由がさっぱり分からない。 まず両親でさえも兄貴の事が分からないというのが異常だ。 (さて準備できた……けどまだ帰って来ないな。) 誰にもその異常を言えずに早三年……今日は俺の18歳の誕生日だ。
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