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姫と王子の脱走騒ぎから二ヶ月。
時は慌ただしく過ぎた。
リンはあの数日後、大臣から次期国王に指名され、いろいろと準備をしてきた。
様々な事がめまぐるしく変わり、今までとの変化もあったがそれほど気にしてはいなかった。
しかし、レンが部屋に帰ってこなくなった事に、リンは不快感と物寂しさを覚えた。
そして王位継承の式典の日。
「リン様、起きてください。」
新しい召使だろうか。聞いたことがない声に起こされる。
起き上がって気づいた。
聞いたことがないのではない。
その声で敬語で話された事がないから、わからなかったのだ。
「おはようございます、リン様。」
リンは自分の頭を疑っていた。
「なん、で…?」
「似合う?」
レンは執事服を指しながらおどけていた。
絶句するリンの前にレンがひざまついた。
「本日より、リン陛下付きの召使になりました。これから何なりとお申し付け下さい。」
完璧な挨拶に、リンの苛立ちは頂点に達した。
「ふざけないで!!!認めないわよこんなの!!誰にやらされてるの?!!言いなさい!!」
「…誰でもないよ、リン。」
レンがそっとリンの頭を撫でる。
「僕が自分で言ったんだ。王子の座を退けば、誰も何も失わずすむ。」
「でも、レンは…っ」
「僕はいいよ。王様になんて、なりたくなかったし。」
「だから、もう泣くな。」
召使は王女を強く抱き締めた。
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