契約

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なんていった?コイツは。 私の間違いでなければ“恋人になって”と言いやがった。 からかってんのか、コイツは。 「できれば、でいいんだけど。大和が一番気ィ使わなくてすむ相手だなって思って」 ああ、なるほど。 つまり、私のことは好きではない。 でも、一番楽な相手だから私が良いってことですね。 どんだけ都合のいい女って見られてんだ。 「私、好きな人いる」 私はまたココアを口に含む。さらに薄くなっている。アンケートに氷入れすぎ! ってかいてやろうか。 「え、マジ?ショック。まあ、おれはそれでもいいよ。普段の生活ではそいつのこと好き。 おれと一緒にいるときはおれのことが好きってわけるなら」 ショックってなんだ。ショックって。 私は普通の高校二年生。むしろ好きな人がいないほうがおかしいだろう。 『大和ー! 好きだぞー』 『何言ってんだよー。照れるじゃんかー。あたしも好きだぜー』 そう言って、(過去の)三城は私の肩に手をまわした。 私も何故かそれがいやじゃなくて、むしろ心地よい気がしていた。 多分、(私がいうと凄く高慢かもしれないが)私と三城は両想いだった。 それはお互い、なんとなくで分 かっていたんだと思う。 だが何故か……――いや、だからこそ。どちらからも想いを告げることはなかった。 卒業してからそれをとても悔やんでいた。 三城の目を見ていると、思い出してしまう。 三城が当たり前のように隣にいた光景を。 冗談を言い合っていた、あの日々を。 今では、その日がとても遠く感じてしまう。(当然だ、三年近くたっている) ただ、私が“YES”と言えばそれは叶ってしまう。 また、手元に戻ってくる。 瞬間、日高の顔が過ぎった。 私が今好きな人は日高だ。それは紛れもない事実。 三城のことは二番目ぐらいに好きだ。多分。 三城に対する感情を比率で表すと 友情:恋情:同情=8:1:1だ。 (日高へはどうなんだろう。 友情:恋情=5:5というところだろうか)
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