契約

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世の中、両思いになる確立って言うのはかなり低いものだと思っている。 私がここで“NO”を選択しても、日高と付き合えるわけじゃない。 コレを誘ってくれた三城が傷つくだけ。 二番目に好きな人と付き合うことって言うのは、別に法律で禁止されているわけじゃない。 心の中では日高が好き、表面上は三城と付き合う。何がいけないことなのだろう? 悪魔が、私の心の中でささやく。 それにコレは……――。 人助け、そう、人助けだ。三城を助けるため、しょうがないのだ。 私は、答えをきめた。 「……三城がそれでいいなら。いいよ」 その瞬間、三城の顔がパァッと輝いた。子どものように。 「でも、いいのか?おれ死ぬっていっても、いつ死ぬか分かんないんだよ」 「気が向いたらいつでも切ってもらっていいよ」 私がそういうと、三城はうって変わって不服そうに頬を膨らませた。 「じゃあ、恋人“ごっこ”にしない?」 何言ってんだ。この男は。 「おれ、いつ死ぬか分かんないし。“ごっこ”なら気楽だろ?」確かに。 あんまりのめりこむのはよくない。 それに、三城は近いうちに死んでしまう。 なら、なおさらのめりこみたくない。 三城だって、途中で嫌になるかも知れない。 「いいよ。三城もやめたくなったらいつでもやめていいから」 「……おっけー。まぁ、おれから“やめた”はないだろうけどね」 『まぁ、俺から別れるは無いと思うけどね』 そう言って、笑ったあのひと。 同じ笑い方で。 ああ、なんてこったい。 結局、私はおんなじことを繰り返してしまうかもしれない。 ため息を冷たいココアと一緒に飲み込んだ。 「じゃあよろしくな。 若 奈 」 ん?ワカナ?え、今なんていった? 「あれ?お前の名前、若奈じゃなかったっけ?それともワカメ?」 「だまれ、真祐」 その瞬間、目が合い思わずふふ、と笑いが漏れる。 一瞬、日高の顔が浮かんだけど、振り払った。 これは人助けなんだ。と自分の心に言い聞かせて。 私達はその後指切りをした。 指が離れた後真祐は「契約完了!」といって、笑っていた。 笑ってた。
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