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そこにあったのはアザだ。真祐の白い胸板には似つかわしくないほど毒々しい紫色をしている。
先ほどちらと見えたのだ。この毒々しいアザが。
このアザ、見たことがある。何かのホームページで。
そのサイトにはその病気の恐ろしさが長々と書いてあった。
古い記憶を必死で辿り起こす。
確か、前例はかなり少ない。
あざが出て、手足のしびれ、記憶障害などが起こり、突然死すると。
最期は痛みすら感じない。
健康な人間が、いきなり死ぬのだ。お別れの言葉も言えずに。
原因はまだわかっていない。不治の病だと書いてあった気がする。
どくん、どくんと鼓動が早くなるのを感じる。
真祐、死ぬ?
ねえ、死ぬって、どういうこと?
――真祐がこの世からいなくなる。
私、その事実を受け止めていなかったのかもしれない。
今までは真祐が口で言うだけだった。
でも、“死ぬ”って証拠を目の前で見せられたのだ。
冷静でいられるわけがない。
夢であって欲しい。そう願う。
だって真祐が死ぬわけない。
私の知っている真祐はいつもかっこよかった。
いつも周囲にいる人間に元気を与えるヤツだった。
でも、その反面誰よりもデリケートで、自殺願望が時々顔を覗かせるかわったやつだったけど。
私に生きる希望を与えてくれたヒト。
こんな病気にかかるヤツじゃなかった。
中三の卒業式ではなれてから二年の月日が流れているが、彼はこんなにも変わってしまったのだ。
「だから言ったじゃん。おれ、死ぬって」
真祐は相変わらずの淡々とした口調で言った。
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