誓約書

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くさいセリフ吐くな、嬉しいからいいけど。 ばかっていうな、と真祐が呟くのが聞こえた。 どくん、どくと彼の心臓の音が聞こえた。 生きている。生きている。彼はまだ、生きている。 未来のことなんて分からない。 だけど 今いる彼を大事にしなければいけない。そう思った。 「まぁ、どうやったら若奈が泣き止むかわかんないから、結局ばかなんだけどね」 ため息と共に吐き出したような声。 「真祐はばかでいいよ」 そうじゃないと、ばかっていう相手いなくなっちゃうじゃん。 「明日、土曜だよな」 しばらくの空白の後、ポツリとつぶやくように真祐が言った。 えーと、今日は週一授業の保健があった。つまり金曜日だ。 「ん。そうだけど」 顔を上げて真祐の顔を見る。真祐は優しく微笑んでいた。 「どっかいこうぜ」 それって、つまりデート? 男と遊びに行ったのなんていつ以来だろう。 「もちろん」 洋服は何を着ていこう。少しだけ、本当に少しだけ楽しみだ。
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