Orange―橙―

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音はまた紡がれる。 「…まだ、かかるよ」 彼の言葉は必要な事だけを告げてくる。それは、彼にとって貴重なこの時間を大切にしているからこそ行動しているのかもしれないし、ただ言葉を発するのが苦手なだけなのかもしれない。 「時間が?」 私が聞き返すとゆっくり頷き、肯定する。 「でも、もう少し待ってる。」 「そう。」 短く、何でもないように呟くと彼はまた絵に視線を移し、世界を非現実へと変化させる。 嘘。 私は、嘘をついた。 もう少し待ってる、ではなく“最後”まで待つつもりなのだ。もしも“私”が此処に存在することを赦されているならば、私はまだまだこの彼の世界に浸っていたいのだから。 この居心地の良い世界に。 だから、私はまた夕日を有する空を見上げる。 彼と彼の絵が作り出したこの色の空間が終わりを告げるまで。 Orange―橙―
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