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「止血しかできません! 傷が深すぎます!」
菊が焦った口調でそう言った。
「じゃあ止血だけでも……《ヒール》!」
里奈のおかげで、とりあえず出血は止まった。
傷口はかなりの熱を持ち、煉は汗だくで意識はなかった。
「とりあえず安静な場所に行かないと……それに泰陽も……」
里奈は肉体強化の力を使い、煉と泰陽を担いで、急いで自宅に向かった。
華月は地下にある基地に戻っていた。
見張りに挨拶をして、隊長専用の個室のドアを開ける。
「遅い……」
ソファーに熊のぬいぐるみを抱きしめる背の小さい女の子が座っていた。
「あれ、何でここにいるの? てかこれでも能力使って早く帰ってきたんだけど」
華月は女の子の向かいのソファーに座り、そう言った。
「私は……10分待った……充分……遅い」
「ハハハ、薺(ナズナ)隊の隊長は厳しいな」
苦笑いしながらそう言って、華月は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、女の子の前に置いた。
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