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その頃……
場面は泰陽のマンションの自宅。
泰陽は自室のベッドに座りながら俯いて深く考え込んでいた。
猫は勉強机の上に座り、そんな泰陽を観察するように見ていた。
(兄貴……何があったんだよ……)
泰陽は家に帰ってからずっとこの調子だ。
黙って見ていた猫だったが、流石に呆れたのか深い溜め息を吐くと……
「……ふぅ、しょうがないっスね」
シャッ!!
泰陽の顔を引っかいた。
「ぬぉわ!? いってぇな!! 何すんだよ!!」
泰陽は顔を押さえながら、猫に言った。
「考え込んだら、何かが変わるんスか?」
「あ!?……いや……変わんねぇけど……」
「じゃあ考えるだけ無駄っスよ。前を向かないと」
「……前を?」
泰陽は下を向いて呟く。
「……ふぅ……たしか泰陽って名前っスよね? なら太陽みたく明るくならないと」
「……太陽?」
「兄貴さんが闇に包まれた月ならば、必死になって照らさないと。太陽と月は助け合ってこその太陽と月っスよ」
「……臭い台詞過ぎて言ってる意味が分かんねぇよ……」
猫の言ってる言葉の意味が分からず、頭を抱え尚更考え込む。
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