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「ううん、もうちょっと待ってて。あ、そういえば今日お母さんがウチに食べに来ないか、って言ってたよ。どうする?」
「いや……今日は遠慮しとくよ」
そう言った煉の表情は苦笑い気味、明らかに何か悩んでいる顔だ。
「……部活でなんかあった? 元気ないじゃん」
「いや、なんもないよ。ちょっと疲れただけ……」
里奈は煉との付き合いが長い、俯き加減で話す煉を見て何かあったんだと察知するのに時間は掛からなかった。
自分に話さないなら、話してくれるようになるまで待つしかないと里奈は諦める。
「そう……じゃあレジに行こう? 早く帰って、煉を休ませないとね」
せめてものと満面の笑顔でそう言う里奈。
「ありがとう、里奈」
煉の固かった表情が少し緩んだ……里奈はそう感じた。
そして幼なじみに気を遣わせている本人は校門から今レジに向かう所までずっと考え事をしていた。
「(選ばれた人間……僕がいないとあの猫は戦えないんだよな……大丈夫かなぁ……でもやっぱり僕には……)」
煉は責任を感じていた。
選ばれた自分にしか世界を救えない、でも刃物などの武器で戦う命懸け。自分には勇気がない。
葛藤しているのだ。
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