10773人が本棚に入れています
本棚に追加
既に旅館の前にはバスが停まっていた。
「じゃあな、ばあちゃん」
「また顔を見せに来ておくれよ?」
「わかってるよ」
啓吾や他の人達は旅館の女将に挨拶を終え、それぞれ部活毎にバスに乗り込んだ。
「ふぅ、疲れた」
泰陽は呟きながら席に座った。煉が窓際で隣は泰陽だ。
「僕の方が疲れたよ。部活と特訓を両立してたんだもん」
煉が言うと、後ろに座っていた草部が前の席に身を乗り出す。
「俺の方が疲れたし! 結局ポーカー一度も勝てなかったし! 布団毎日敷いたし!」
「草部……同情するよ」
「同情するなら運をくれ!」
「……」
顧問の先生が出席確認をし始めた。全員いることを確認すると運転手さんに合図をし、バスは走り始めた。
「もう日が沈んできてる」
煉は窓の外の景色を眺めながらそう呟いた。
しばらく経つと……
「なぁ、ポーカーやらね?」
草部がトランプ片手にそう提案してきた。
「……そんなに悔しいの?」
「ばっ! ちげーよ! 一度は勝ちたいなぁ、なんてこれっぽっちも思ってねぇよ!?」
「……」
「同情なんてすんじゃねぇ!!」
最初のコメントを投稿しよう!