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日照りが強くなり始めた7月の半ば。
ある家のある一室でジリリリン!! という甲高い音が響く。
ベッドに潜っている少年は枕元に手を伸ばし、五月蝿く鳴り続ける目覚まし時計のボタンを押した。
そして、もぞもぞと動き布団から顔を出す。
「…………」
脳が覚醒するまで何もない壁を眺めると、半開きな両目をこすりながら少年はベッドから降りる。
そして、覚束ない足取りで一階に降り洗面所へと向かった。
「ああ……寝癖が酷いや」
鏡で自分の顔を見ての第一声。
髪の毛を真ん中に分けていて、寝癖がぴょんと所々跳ねている。
顔立ちは割と整っている方だが、今は非常に眠そうな表情だ。
この立派な一軒家で一人暮らしをしている彼の名前は《斎藤 煉(サイトウ レン)》。
兄弟はなく、両親は海外に出張中だと煉は聞いている。
両親からの仕送りがあるが最後に会ったのは幼い頃だった為、親の顔を覚えていないのだ。
小さい頃は両親の友人である隣の家族と暮らしてきた。
「直んない……もういいや」
寝癖を直すことを諦め、歯磨きをし終えるとリビングのテレビを付ける。
「最後の食パン……今日は買い物に行かないとな」
そう独り言を言い、朝のニュースを眺めながら食パンにイチゴジャムを塗り牛乳と共にそれを食べ始めた。
その時だった。
ピーンポーン!
家のインターホンが鳴り響く。
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