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里奈のかかと落としは地面にクレーターを残す程の威力だった。
しかし、手応えがまるで無い。
「避けられた?」
里奈は辺りを見渡すと、小田倉は遠い所にいた。
「かかと落とし直前の肉体強化で避けたのか」
「危ないなぁー。でも4回も強くなれば、君達なんてイチ殺だねぇ」
小田倉はおどけた感じで言った。
その時里奈の右腕に激痛が走る。
「うっ!? 右腕が折れてる……」
床に叩きつけられた時に里奈は右腕が折れてしまったらしい。
「すいません、先輩。時間稼ぎに集中し過ぎて離れ……?」
里奈はそう言いながら、美雪の方に振り返ると驚いたような表情になる。
美雪の周りにあった巨大なつぼみは開き、花になっていたのだ。
そして美雪は扇子で里奈の折れた右腕をさすった。
「治った……」
里奈は腕を動かしながら呟いた。
「桃色の花の花粉は癒しの力があるんです」
美雪は花粉を扇子に付けて、里奈の右腕に振り撒いたのだ。
「本当は花の香りに誘われた虫さん達は私が操れるようになって、それで花粉を運ぶのですが、虫さんがいないので扇子で代用したんです」
「まさにサポートですね。ありがとうございます」
「どういたしまして」
美雪は笑顔でそう言うと、里奈は遠くで何故か踊っている小田倉を睨みつける。
「ある程度の傷は自分で治せます。先輩は離れてて下さい。あたしはもう一踏ん張りして来ます!」
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