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美雪は扇子を手でゆっくりと広げる。
そこには真っ赤な花粉が付いていた。
「ドーピングのようなものです。赤い花の花粉は疲労を感じさせないで、一日中ずっと戦っても疲れないという効果が得られます」
そして美雪は扇子をトントンと叩き花粉を里奈のふとももに浴びせる。
すると、先程まで疲れきっていた里奈が嘘のように、すくっと立ち上がった。
「す、すごい……体が軽い!」
「しかし、もちろんデメリットはありますよ? 効果が切れた時は、三日間は動けないらしいです」
「らしい?」
「啓ちゃんにもドーピングをしたことあるんです。その時の啓ちゃんの感想です」
「覚悟はしておけ、ってことですね」
里奈は肩を回しながら目を押さえている小田倉の方を向いた。
小田倉は既に落ち着いていたが、またもや雰囲気が変わっている。
「目潰し……許さないぞぉ!! このメスブタがぁ!!」
小田倉は完全に頭に血が昇り、不思議キャラではなくなっている。
それを見た里奈は僅かにニヤける。
勝機の兆しが見えてきたのだ。
「キレてる奴ほど、動きが単調になる。それにあたしは全快モードだし、イケるかもしれない!」
「イケるかもしれないんではなく、イケるんです。もう先手は打ちましたから」
美雪は微笑みながらそう言った。
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