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「ハァ……ハァ……諦めろ。その毒は一度、体を回れば必ず死ぬ!」
武田は再び猫に手をかざし斧を具現化する。武田は笑みを浮かべ勝利を確信していた。
しかし、それでも啓吾の顔が歪むことは決してない。
「なら……毒が回る前に……」
啓吾は毒針が刺さっている腕を、もう片方の手で軽く握る。
その瞬間、啓吾は電撃を自分の腕に放つ。
「な、何をしているんだ!?」
啓吾の腕は電撃の熱で焦げて黒く変色していき、刺さっていた毒針も電撃で消えていく。
「ふぅ……痛かった」
電撃を放つのを止めると、その腕は真っ黒に焦げ、かなり痛々しかった。
「電気の熱で毒を血液ごと蒸発させたんだ」
「ば、馬鹿な!」
「腕一本あれば、お前なんか楽勝さ」
啓吾は刀を持ち替える。焦げた腕は神経すら通っていないのか、力無く垂れ下がる。
「お前に恐怖は無いのか!?」
武田はさっきの啓吾の行動を見て、軽い恐怖を覚えた。啓吾は体がどうなろうと最終的に勝ってしまえば、やはりそれは勝ちなのだ。
勝つ為に手段を選ばない男。武田にとってそれは人生初めての壁だった。
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