◆何者!?◆

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煉の目の前で猫は目をつぶり、成り行きを見守るような様子だ。 時間制限を設けられ、人生の分岐点を迫られた煉は俯いたまま動かない。 もし、色んな人に煉と同じ状況で同じ選択を与えたらどんな選択が多いだろうか。 人生に少しでも退屈を感じている者や、後先考えない者はすぐに名前を言うだろう。 スリルな世界や、人にはない力は人間の憧れがあるからだ。 だが、命懸けということとしっかりと現状を把握してるものは名前を言わないだろう。 自分自身は勿論、見知らぬ人の命の責任を持つことを考えればむしろ名前なんて言えない。 煉にはどんな状況下でも冷静になろうとする素質がある。 臆病な性格はあれこれ考えた結果、少しでも自分に不利なことがあれば、それを避けることに専念する。 つまり引っ込み思案から来ている臆病なのだが、悪く言えば利己主義と言ってもいい。 「(答えは決まってる……僕には出来ない。僕より強い人なんてたくさんいるだろうし、もし失敗して誰かに迷惑がかかったら……ごめんなさいで済む問題じゃない) 煉は猫を見ると、丁度猫は壁に掛けている時計を確認しているようだった。 猫の視線を追うように煉も時間を確認する。 残り二分。
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