◆一緒に◆

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啓吾が煉の左手をまじまじと見てため息を吐くのと同時に煉も視線を逸らす。 「あーあー、ていうかグロっ」 「…………」 「部長の俺が、しかも期待のお前とくれば異変がありゃそりゃ気付くよ。無茶な練習はケガに繋がるだけだ」 「……はい」 煉はただそう頷くことしかできなかった。 武器猫の話を言っても信じてはくれないだろう。 「おいマネージャー! 煉の手、診てやってくれよ。そんでお前は休憩しとけ。東丘高校の期待の星に無茶なんかさせられねぇからな」 「そ、そんな……僕なんてまだまだです」 「謙遜すんなって。とにかく今日はもう休憩してろ」 そう言って啓吾は練習に戻って行く。 駆けつけたマネージャーにもお叱りを受けた煉は、手当てを終えると練習が終わるまで正座して仲間の練習を眺めた。 そして部活が終わり、学校には殆ど生徒が居なくなった頃、待ち合わせ場所の校門で煉は里奈を待っていた。 時刻は八時になるちょっと前、外はもう暗く街灯がちらほらと辺りを照らす。 「(今日は無事に帰れればいいけど……)」 時刻を確認しようと携帯を取り出した瞬間、里奈が駆け寄ってきた。 「ゴメン! 片付けに時間かかっちゃってさ。待った?」 「いや今来たばっかだよ。それより早く帰ろう。この辺は危ないし……」 「そうだね。早く帰ろっか」 煉と里奈は早速家に向かって帰り始める。
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