4人が本棚に入れています
本棚に追加
その獣は、美しい白い毛並みをしていた。
一本の鋭利な角を持ち、澄んだ瞳をしていた。
凛とした立ち姿から、神々しくも見える。
夢では無いだろうかとさえ思えた。
だが足の痛みは確かにある。
夢では無いようだ。
一歩ずつゆっくりと、青年に歩み寄って行く。
すぐ側まで近づくと、一角獸は、その角で青年の足を刺した。
痛みは無い。
目の錯覚か、足元は輝いて見えた。
一角獸が青年の足から角を抜くと、そのまま森の奥に姿を消して行った。
気が付くと、青年の足は元通りに直っていた。
青年は不思議な体験をした。
後にも先にも、あの一角獸に会ったのは一度だった。
聖なる獣は、心優しき者への加護をするために舞い降りたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!