一匹の獣

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その獣は、美しい白い毛並みをしていた。 一本の鋭利な角を持ち、澄んだ瞳をしていた。 凛とした立ち姿から、神々しくも見える。 夢では無いだろうかとさえ思えた。 だが足の痛みは確かにある。 夢では無いようだ。 一歩ずつゆっくりと、青年に歩み寄って行く。 すぐ側まで近づくと、一角獸は、その角で青年の足を刺した。 痛みは無い。 目の錯覚か、足元は輝いて見えた。 一角獸が青年の足から角を抜くと、そのまま森の奥に姿を消して行った。 気が付くと、青年の足は元通りに直っていた。 青年は不思議な体験をした。 後にも先にも、あの一角獸に会ったのは一度だった。 聖なる獣は、心優しき者への加護をするために舞い降りたのだった。
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