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それは自分と同じ位の歳の少年だった。
平均より少し(と自分では思っているが、実際はかなり)小さい翔太と、同じ位の身長。
ただ闇の中で光って見えるほど目つきは鋭く、心まで見透かされそうだった。
そんな彼が、口を開く。
「否獣……いや化け物といった方が分かりやすいか……。とにかく、今のような意味の分からない生き物とは目をあわせるな」
「目を……?」
いきなりの命令口調に戸惑う翔太。
これは自分のために警告してくれているのだろうか。
傷を治してくれたことから危険はなさそうだと思い、翔太は礼を言うことにする。
「とりあえず……助けてくれて、」
「うるさい。無駄な仕事を増やさないでくれたらそれでいい」
翔太の言葉を強引に断ち切るその少年の態度に、少しの腹立ちを覚える。
それをなんとか、命の恩人なのだからと抑えて、
「えっと……名前訊いていい?」
「断る」
返事は簡単なものだった。
自分を助けてくれた人の名前を訊く、それすら拒否された。
少年の態度に呆然とする翔太を置いて、彼は無言で去っていった。
見送る翔太は、しばらくその場に立ち尽くした。
我にかえって家への道を再び歩き出したのは、十分ほども後になってからのことだった。
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