いち

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 3日前の夜。  自分の部屋でゲームをしていた明良が、水を飲みに一階に下りた時の事。 両親が口喧嘩をしていた。  こうして両親の喧嘩を目にするのは珍しい事ではない。そういえば小さい頃の事を思い出してみても、あまり良い思い出はない。  棚からグラスを出し、水を一杯飲む。 まだ口喧嘩している両親を後目に、部屋に戻ろうとした時、 「明良、ちょっといい?」 母親に呼び止められた。 明良は頷いて二人の側に座る。 「明々後日から休みでしょ? ……今、家の中こんなだし、お爺ちゃんの所に行ったらどう?  お父さんとも話してたんだけどね、明良が帰って来るまでには全部終わってると思うから……。ね?」  明良は頷くしかなかった。昨年辺りから覚悟はしていたから、大してショックでもなかった。 きっと帰って来た頃には、二人は離婚届に印を押しているだろう。…いや、もう既に届け終わっているかもしれない。  とにかく、明良にとってはどうでもいいことだった。 .
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