No.2「記憶」

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夕焼けが教室を照らす。 さっきまで豊が立っていた場所を、優しいオレンジが照らす。 こんなに優しい夕焼けなのに、わたしは何だか悲しくなってしまった。 ランドセルを背負って、教室を飛び出し、わたしは息を荒くして走る。 もう誰も居ない下足室は静まり返っていて不気味だ。 豊は居ない、広い校庭にも誰も居ない。 わたしの影だけが伸びる。 肩を落として泣きそうになる自分を堪えて、わたしは歩く。 「蓮ーー!」 俯くわたしの耳に、優しい声が響く。  
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