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何が一番大切かって。
聞かれてすぐに答えられるほど、人間できていないんだよ。
一番大切なものが何か、とっくに決まっているんだけどね。
――本編に関係ナシ。合掌。
どっかの世界の、とある大陸の某国。
剣やら魔法やらがイリミダレ、盗賊・戦争・怪物退治、なんでもありな所謂ファンタジー世界。ファンシーじゃないところが妙に現実的で、国務づきの大臣という名の政治家たちが賄賂もらって、それを隠すために東奔西走したりしてるところなんかは、ちっともファンタジーじゃないようだが、電柱一本見当たらない街中は、やはり魔法世界なねだろうと、妙な感心をしてしまうところである。
さて、人間大の狼が街を襲い畑を食い荒らし、空を自在に飛ぶニワトリが通行人の頭に卵を産み落としていくような、とってもメルヘンかつ派手にファンシーでファンタジーな世界のこの国から、物語りは始まっていくのだ。
そりゃもう、誰が何と言おうとも、ここから。
{ギルド組合員に通達。
どっかの世界のとある大陸の某国にて、事件が発生。
とにかくとっとと原因つきとめて、なんとかするように。
報酬はどっかの世界のとある大陸の某国の王様と勝手に交渉。
んじゃ、健闘を祈る。アデュー✋
ギルドの偉い人より}
などという、くだらな……もとい、暇をもてあましている人間には調度よさそうな暇つぶしが全国に下賜されてから数週間後、どっかの世界(以下略)には、これでもかというほどの人が集まっていた。
戦士に魔法使い、みるからに客目当ての行商人から、ハイキング感覚の親子連れまで職種も人種も様々、いろとりどりでマンガンゼンセキ、意味不明。今ここにくれば、これからなれるであろう職業のすべてがわかってしまいそうだ。
そんな中に、一際目立つ長いミツアミ。右手には肉まん、左手には烏龍茶。まさに夏場の海水浴場、イモアライも同然の人込みの中を、するりするりとそれこそ泳ぐように移動していく。その後を追うように、黒い影がやはり華麗に人波を摺り抜けていく。
今回の依頼をひどく面白がって遊びに、ではなく。困っている人達を見捨ててはおけない!とやおら立ち上がったディアスを胡散臭げにしながらも、結局止め切れずにここまできてしまったヒューイは、心中深く溜息をついた。
こうなることはわかっていた。ディアスが真面目に仕事を受けたことなどないのだから。
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