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なんにしろ、ダンジョン探索に出るのならば、いくつか補充しておかねばならない物がある。ディアスがそのことを覚えているとはとうてい思えないから、買い物を済ませてしまわねば。まとめ買いなら多少値引きも期待できる。
……最近少しずつ、主婦感覚が芽生え始めているヒューイである。
「美人さん、びっじんっさん~」
鼻歌混じり、スキップしながら目指すは、本人いうところのセンサーが探知した、美人さんのもと。ヒューイの気配が近くから消えていることには知らんぷりで、いそいそとその場へと急ぐ。相棒兼恋人に対する態度にしてはずいぶんだと思うが、本人たちは気にしていないらしい。とはいっても、ヒューイの方はもう諦めの境地といったほうが正確かもしれないが。
「美人さん、はっけーん!」
にゃは。
突然目の前に飛び出してきた少年に一瞬驚いて硬直したが、すぐにいつもの落ち着いた顔へと表情を戻すのは、以前仕事で一緒になったことのある青年だった。色素の薄い、さらさらの髪に、深い琥珀色の瞳。黙っていれば深窓の令嬢といった容貌の持ち主は、ふわりと微笑んで、聞きやすいテノールの声を紡ぎだす。
「久しぶり。元気そうだね、ディアス」
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