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ディアスはそれ以上つっこまずに戻ろうとしたが、シオンが意外なことを口にしたため、ヒューイのところへ帰るのは、少しお預けとなった。
「そういえば、さっきクレイたちとも会ったよ」
「え、ホント……ああっ!」
「どうしたんだい?」
突然の大声にも全く動じず、空になったティーカップをテーブルに戻すとほぼ同時、ディアスがぶんぶんと両手を大きく振っての大声で、通りの向こうを行く、見知った顔を振り向かせた。
「クレイクレイ、クーレーイーっっ!」
隣にいるユーマのことは、まったくの無視である。いっそ天晴れ。
必要以上の大声で叫ばれ、周囲の注目を集めることになっても穏やかな笑顔を崩さぬまま、クレイたちは二人のいるテーブルへと歩み寄ってきた。
紅い髪に翡翠の瞳。こちらもまた黙っていれば絶世の「美女」だ。
隣をついてきたクレイの恋人は、不機嫌な顔でディアスを睨みつける。
「お前な、でけえ声で叫ぶなよ」
無視。
「クレイもきてたんだなー。今シオンに聞いてさ。そしたら歩いてたからびっくりした」
「人の話聞けよ」
あうと・おぶ・がんちゅう。
バームクーヘンのかけらを飲み込み、クレイを席に誘う。
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