赤ん坊と母親

2/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
私は、赤ん坊を抱き見つめたまま、立ち尽くしていた。 ―これが、イベントなの?― そう思う事しか出来ない。 掲示板には、イベント情報があった。 このネットゲームを作った会社は、何を考えているのか。 「それにしても…―」 私が喋り途中で、またあの、嫌な耳障りな音が聞こえて来た。 「こ、今度は何っ!?」 落ち着いた女性の声が、何処からか聞こえてきた…―― 「ようこそ、月華。私は貴女を待っていました。貴女は、その子に選ばれたのです。その子を育てて下さい。そして、名前を…―」 「えっ…え?待ってよ…私、子供育てた経験無いし…名前って…」 声の主は、もう応えてはくれなかった。 頭が混乱した。 育てる? この子を? 名前つけるの? 私が、この子の母親…になったのだろうか。 赤ん坊は、また泣き出した。 ―おぎゃあおぎゃあ― 子供を産んだ経験も、育てた経験も無い私に、この子を育てろというのか。頭が痛くなった。 一応、あやしてみた。 「あぁ~うぅ」 泣きはすぐにおさまり、赤ん坊の声は、愛しく思わせる程に可愛く無邪気に笑ってみせてくれた。 「名前、付けるんだっけ」 バヵな頭をフルに使って、考えた。 赤ん坊の名前は 『リコリス』image=49389370.jpg
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!