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私は、赤ん坊を抱き見つめたまま、立ち尽くしていた。
―これが、イベントなの?―
そう思う事しか出来ない。
掲示板には、イベント情報があった。
このネットゲームを作った会社は、何を考えているのか。
「それにしても…―」
私が喋り途中で、またあの、嫌な耳障りな音が聞こえて来た。
「こ、今度は何っ!?」
落ち着いた女性の声が、何処からか聞こえてきた…――
「ようこそ、月華。私は貴女を待っていました。貴女は、その子に選ばれたのです。その子を育てて下さい。そして、名前を…―」
「えっ…え?待ってよ…私、子供育てた経験無いし…名前って…」
声の主は、もう応えてはくれなかった。
頭が混乱した。
育てる?
この子を?
名前つけるの?
私が、この子の母親…になったのだろうか。
赤ん坊は、また泣き出した。
―おぎゃあおぎゃあ―
子供を産んだ経験も、育てた経験も無い私に、この子を育てろというのか。頭が痛くなった。
一応、あやしてみた。
「あぁ~うぅ」
泣きはすぐにおさまり、赤ん坊の声は、愛しく思わせる程に可愛く無邪気に笑ってみせてくれた。
「名前、付けるんだっけ」
バヵな頭をフルに使って、考えた。 赤ん坊の名前は
『リコリス』
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