赤ん坊と母親

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私が、『リコリス』と名を呼んだ時、赤ん坊は無邪気に笑った。 喜んでいるのだろうか。 何故この名をつけたのか。私は、いや、リアルの私は、花が好きだ。 だから付けた。 リコリスの花言葉は 「愛しい人」。 リコリスの和名も、もぅ一つの花言葉も知っている。 だが、此処はやはり、「愛しい人」を取るべきだと思った。 「リコリス…」 目を開けたリコリスは、手を伸ばし、私の顎を触る。 頬が触りたいのか。 小さな手に、体温が感じられた。 私は…ネットゲームの中…いや、この“世界“の人間じゃない。 リアルの人間だ。 ……だが。 確かに顎辺りの小さな手に体温を感じられる。 生々しいと言えば、リアルだが、確かに生々しく、温かい。 ―リコリス…― リコリスをぎゅっと優しく強く抱きしめた。 もちろん、手加減は、する。赤ん坊を殺すなんて出来ない事だ。 「まぁま」 「え?」 私を呼んだのか。 “ママ“ 何故か、笑みを零した。 赤ん坊が、“母親“を呼んだのだ。 嬉しい。 ―…あ、あれ?w― 笑みを零した自分自身が謎だった。 勝手に、何時の間にか、母親を自覚していたからだ。 「私の子供、だもんね」 リコリスを見ながら私の口は、やはり、ニヤけていた。リコリスは、無邪気に笑っている。image=49566743.jpg
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