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プルルルルルッ…プルルルルルッ…
カチャ
『はぃ、もしもし』
《あ、紗榎?お母さんだけど…今日、お父さん紗榎の為に帰ってくるって!よかったわね!》
『…そっか、出張中なのに………何か悪いね…』
《小6のお子ちゃまが何遠慮してンのよ!…素直じゃないわねぇ…あ!そぅそぅ、お母さん、ちょっと遅くなるから台所にある残った食器片付けといてくれない?ほら、あの人ウルサイから…あと…………》
((……あ~ぁ…今日は紗榎の誕生日なのになぁ……))
そんな事を考えながら私は母親の話に適当に相槌をうっていた。
《…………じゃあ、よろしくね!くれぐれもお父さん怒らせる事のないようにね!》
『うん…わかったよお母さん。』
カチャンッ
受話器を置く。
『…はぁ……やっと終わった…
…お父さん帰って来るのか…』
私は…母に内緒にしてる事があった。
それは……虐待を受けている事だった。
この時は理由が解らなかった。
決まって、父の帰りの早い日に私が学校から帰ってきてから…
――つまり、私と父、二人きりの時に父は私に暴力を奮った。
殴る、蹴るは勿論の事、、気絶する直前まで湯舟に顔を沈められたり、“悪い子の手は切らなきゃね”と言って、皮がむけるまでバターナイフで手首を擦ったり。
気チガイとしか思えなかった。
でもあの頃の私はまだ子供で、無力で、逆らう力などなかった。
でも、一年程前から父は出張に行った為、安心していた。
あぁ、平穏な毎日が戻ってきたって。
この日までは。
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