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「離せ…っよ!!」
「おいおい、生意気な口利いといて逃げようってのか?」
沖縄には珍しいコート。その中央にて、何やらよからぬ会話が慧の耳に入ってくる。
ふと中央を見ると、そこには慧と同じくらいの何とも口の悪い少女が、地元の大学生らしき者三人に囲まれていた。
「ちょっと…慧?」
「ああ、咲。ほら中央ん所…」
慧は遅れて来た咲にも、その光景を見せる。表情を曇らせる咲だが、隣に居る見知らぬ女性に事情を訊ねる。
「何かね、あそこに居る大学生が中学生かな…相手に容赦なしって言うより、酷い接触プレーとかしちゃってね…たまたま見てたあの女の子が、割って入って行ったみたい」
嘘は吐いていないだろう。見たことを、そのまま慧達に教える女性に咲は頭を下げる。
「何か――許せない」
その光景を煽る者。
その集団に咲は、割って入って行くなり、男達の前に立ち塞がる。
慧は、そんな咲を足早に追い、同じく男達の前に立つ。
「あ? 何だてめーら」
金髪の髪をクルクル指で掻き回す男は、慧と咲を睨むなり慧の前に立ち塞がる。
「いや、まー、通りすがりなんですけど…一対三は無いんじゃない?」
苦笑い――…。急展開なのにも関わらず、慧は言い切る。大学生達は、それが感に障ったのか次は、慧を囲み出す。
「言ってくれるじゃねーか。じゃあ、お前も一緒に相手してくれんのか?」
一人の大学生は、顔をニヤニヤさせながら慧に訊う。
慧は首を傾げるなり、先程囲まれていた少女に視線を移す。
「じ、実はバスケの試合をして勝ったら、もうここに来ないって…」
少女はそこまで言うと、人見知りが激しいのか、俯いてしまう。
「何だ…そんなことか」
空気がピンと張る。
大学生達は慧をキツく睨み付けると、少女に向かって口を開く。
「丁度良い……一対一にしようか迷ったが、邪魔者二人も入れて、三対三でやろーじゃねーの」
その大学生の言葉に、少女は唇を噛みしめると、弱々しい瞳で慧と咲を見る。
「仕方ない…咲、出来る?」
「うん、ってかやる!」
気合いの入った咲を見て、慧は一瞬大丈夫かと不安になるが、何とかしようと心に決めると、持っていたTシャツを着て、大学生の元に向かう。
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