699人が本棚に入れています
本棚に追加
「先攻、貰って良いか?」
慧の訊いに、大学生達は余裕の表情を浮かべながら頷くと、ボールを慧に投げ渡す。
ショートパンツにTシャツの咲に、ラフな格好な少女。
「君、名前は?」
「橘…瑞希(たちばな みずき)です」
先程の口調は何処に行ったのか、少女は優しい口調で返す。何でも瑞希は、弟が絡まれていたため助けに出たのだと言う。
「そっか、俺は慧。で、こいつが彼女の咲、呼び捨てで構わないよ」
「はい…あ、ありがとうです」
俯きながら、蚊の鳴くような声で呟く瑞希。
咲は、そんな瑞希に手を差し出し握手を求める。応じる瑞希。二人が握手をしている最中、大学生三人組の準備が出来たようで、コート上には六人の選手が集う。
外野からは、「やれやれ!」との煽りが起こる。
「ちょっと、確認」
慧はそんな中溜息を吐きながら、大学生に目をやる。
「あんたら…年上?」
「俺らは旭河(あさひかわ)大学の三年だ」
その言葉を聞き、咲、そして外野に居る人々の表情がハッとする。
「旭河って、冬季選抜ベスト8の……?」
「くくく…そうだ」
茶髪のロン毛。
金髪のロン毛。
ただの坊主。
三人ともニヤニヤしながら、言ってやったとの表情をする。
不安な表情を見せる咲に瑞希だが、慧の表情は揺るがない。
「どうでもいい。年上なら――手抜かなくて、良いよね?」
ニヤリと笑う慧。まるでその笑みは不適で、大学生は更にキツく慧を睨む。
「強がりもそこまでだ…来い」
大学生達はそう言うなり、それぞれがディフェンスの構えを取る。
「咲、中は危ないから――スリー頼んだぞ」
咲は、ああ見えて選手時代、地元中学の得点王ても呼ばれた実力者。今は肘の怪我によって、マネージャーへと転向したが、実力は確かなもの。
「瑞希はバスケ経験…」
「あるです!」
「ポジションは――…フォワードかな?」
その慧の言葉に、瑞希はハッとする。
「な、何で分かったですか…」
「その理由は後。さ、早く始めようか」
そう言う慧は、ボールを二度三度弾ませると、大学生に投げ渡す。
大学生はそれを返す。
そして――年の差離れた三対三が幕を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!