変わらない青空

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「ナイスだよ、瑞希ちゃん」 咲が瑞希に微笑んでいる中、慧は瑞希の正体に疑問を抱いていた。 相手は男な上に、大学ベスト8であろう大学のバスケ経験者。 そんな輩相手に、女で華奢な体の瑞希が、いとも簡単にスティールが出来るだろうか。 「慧さん、パスくれです!」 慧がつかの間の思考を働かせていると、不意に瑞希が声を掛ける。 「オフェンスを見てからだな…」 慧は呟くと、ボールを二度三度突き、瑞希にボールを渡す。慧の「行け」とのジェスチャーに、瑞希は頷く。 夕方にしては暑い沖縄にある、とあるコート。人集りが出来て更に熱気の籠もっているコート上に――…"嵐"が起こる。 「何だと!?」 コート上で驚嘆の声を上げているのは、茶髪の大学生。 普段バスケに関して、あまり驚かない慧でさえ唖然としている。 「弱いですねー」 ゴール下。溜息を吐きながら、瑞希はリングを通過したボールを手に取る。 何驚いたのか。それは、瑞希のドライブに対してであった。まず茶髪男を抜き去った瑞希は、カバーに来た坊主男をもロールで抜き去り、最後の金髪男を――"ダブルクラッチ"でかわし、ゴール下を割って見せたのだ。 「お、お前…何者だよ…」 刺激が強すぎたか。大学生達は、後退りしながら瑞希に訊ねる。 訊ねられた瑞希は、Tシャツを脱ぎ、上だけ水着姿になると、大学生達に背を向ける。 「ジーニアス…BB…」 大学生達の表情は、瑞希の背を見るなり青ざめていく。瑞希は慧の方を見ながら、微笑んでいる。 「すいませんっしたぁ!」 次の瞬間――…大学生達は、一瞬の隙を突き、その場からダッシュで立ち去る。 周りの野次馬は事が済んだからか、一斉に立ち去っていく。 残っているのは慧と咲、そして瑞希と瑞希の弟。 「瑞希、その背のやつは…?」 瑞希が微笑んでいようとも、大学生達の表情からして、瑞希がただ者では無いことを察知した慧。 だからこそ、その今は向けられていない瑞希の背を、見ておきたかったのだ。
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