変わらない青空

17/56
前へ
/58ページ
次へ
「ほ、ほら用意するぞ!」 「してありまーす」 慧が照れながら皆に指示を出す。しかしメンバー達は動こうとせず、代表して純希が口を開く。 「なっ…あ、アップだ!」 そんな慧の言葉に、龍斗と蓮以外のメンバーは動き出す。 「おい龍斗、蓮!」 「しかし慧が泣きそうな顔――かぁ……」 先程の会話を思い出したかのように、龍斗がニヤニヤしながら口を開く。 それに続いて蓮の表情も、馬鹿にした表情へと変貌していく。 「そう言えば咲…太ったんじゃない?」 同じくいやらしい笑みを浮かべた結衣。慧の隣に立つ咲を見ながら、わざとらしく口を開く。 「結衣!! 酷いよぉ……」 泣きそうになる咲を、結衣は慌てふためき宥めながら、慧のことを睨む。 「元はと言えばねぇ!」 「あー、はいはい悪うございましたよ。さて、アップするか」 怒鳴る結衣を華麗にスルーする慧は、バッシュに履き終え、コート内でアップするメンバーの邪魔にならないように走り出す。 それに続いて、龍斗と蓮も走り出す。 「全く…慧は…。それで、どうだったのよ新婚旅行は」 スルーされた結衣は、近くに怒りをぶつけるメンバーが居ないことを理解すると、咲に冗談を交えながら訊ねる。 「新婚…!? んー、でも楽しかったよ」 最初は驚く咲だが、質問の意図を理解するなり、率直な感想を述べる。 「いいなー…私も…」 「蓮君が居るじゃない!」 まるで慧と咲を羨ましがるかのような口調で、表情を暗くする結衣に、咲はとんでもない爆弾発言をして見せる。 「な、な、な…何で蓮君!」 その結衣の大声に、蓮が結衣の方を向くが、結衣の睨みに蓮は目を逸らすと走り出す。 「ふふ、焦ってる」 小悪魔スタイルの咲。今回ばかりは、してやったとの表情をする。 「おはようございます」 そんな賑やかな聖城高校の体育館に、何やら礼儀正しい声が響き渡る。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

699人が本棚に入れています
本棚に追加