Prologue

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――一年前。 高校バスケ界に、新たな伝説が生まれた。 地区予選初戦敗退校が、僅か一年で――…全国大会優勝。 「今年も……」 「……日本一だ」 少年は空を見上げながら呟くと、手にしたバスケットボールを指の上で回す。 吹き抜ける風。 まるで、約束を守り抜いた少年を称えるかの如く、優しく――優しく。 「ほらぁ、行くよ?」 間延びた声。 聞いただけで癒されそうなその声は、確実に少年のことを呼ぶ。 少年は傍にあるゴールを直視するなり、膝を曲げ――端正なシュートフォームから、ボールに回転を掛けて打ち出す。 「――入った」 少年が呟くと、そのボールはゴールに向かっての弾道を綺麗に辿ると、ネットを大きく揺らし、辺りには乾いた空気を潤す音が響き渡る。 「ほら、ってば!」 「いってー!」 少女は頬を赤らめながら、少年の背を押す。 「えへへ…行くよ?」 少年の首から手を回した少女は、少年の目を見ながら訊ねる。 少年は恥ずかしさからか、空を見上げると、「おう」と返し歩き出す。 まだとある夏の日。 一年前と比べて伸びた髪を風に乗せるなり、見慣れた街頭を歩き出す。 「元気か――健夜…」 一言口にする。 二人並んで歩くその背は、多くの何かを背負っているようにも見える。 少女は少年の手と自らの手を絡ませるなり、不意に微笑む。 「きっと元気だよ!」 「――ははっ、だよな」 終わらない疾走。 少年と少女は、その延々と続いていく道を歩いていく。
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